ボランティア

7、アメリカ式労務管理政策と労働貴族の台頭から終焉へ

偽装労連
 今迄記してきたのは、60〜70年代にかけて、あらゆる企業や国・地方公務員の職場で、共通して行なわれてきたことである。更に記せば、一般労組役員も役職のランクに応じて度合いは異なるが優遇されていた。特に職場を離れて専従役員になると、メリットは格段に違ってくる。会社での役職は別にして、社員制度を導入して従来の年功序列賃金制度を廃し、資格によって賃金が上昇する仕組みに変えているので、会社は専従役員の査定を良くして資格を上げる。賃金は組合費で支払われるので会社の腹は一銭も痛まず恩を売れる。飲み食いは会社の使う高級料亭で、一定の額まではサイン一つでツケでOK、会社払いとなるが恩を着ることになります。

  労組は殆ど全てが労働金庫を利用しています。預金額は、1万人を越す組合員が居れば何十億円、それも賃金天引きですから労金の人件費はただで済みます。組合費も億の単位で労金に預け、一時金の預金も職場の支部役員が集金して本部へ持参、億単位で労金へ預けて置きますから、そのリベートはスーツの仕立券や商品券で本部役員へ届けられます。組合員への物資の斡旋の窓口にもなり、多数の業者からの付け届けも毎日沢山あります。そして組合費で外遊し、あちこちの関係者・団体から餞別が届きます。世知辛い話になって気が滅入るのですが、労組幹部がどのようにして堕落していくかのほんの一例に過ぎません。

 前記したように、職場労働者の血と汗の犠牲の上で、労組幹部が一般労働者・組合員から乖離し、労働貴族としてもてはやされた時期がありました。その最も典型的なのが日産自動車労連(日産自動車や下請け関連企業を含めた労組の連合体)会長の塩路一郎氏です。彼は、労働組合会長(委員長)の立場と力を利用し、組合幹部を重役(役員)に送り込み、日産の経営そのものを支配する勢力を持ち、”塩路天皇”とか、日産の陰の社長ともてはやされ君臨した一時期もありました。その私生活ぶりは、品川の自宅は7DK,別荘を持ち自前のヨットを持つ、車はプレジデントとフェアレディZ2台を乗りまわしている。銀座の女と豪華なヨット遊び、ロスには愛人が居ると、週刊誌で騒がれ、正に労働者を食い物にした「労働貴族」そのものでした。最後は石原俊社長と対立する形で放逐され、政治生命を失って失脚し、哀れな末路となるのですが。

 塩路氏の例は一典型ですが、一般の労組役員は、組合員をどう誤魔化すかに知恵を絞り、職場労働者の権利や利益を守るこ等頭にはなく、会社に点数を稼ぐことのみに集中し、折角得た専従役員の立場を維持するために躍起です。労働組合が労務課の出先機関とか、第二労務課と言われた所以です。第一次オイルショックを機に日本の景気が翳りはじめ、労働貴族という言葉も陰は薄れましたが、その間に労資(使)の関係は構造的に密着し、強調から労資一体のより深く強い密着度を増し、一般組合員から益々乖離した存在となりました。日本経済が底をつき低迷する中で、企業のリストラを容認するだけでなく、その尖兵としての役割を果たす凶暴さを持つに至ってきました。老病弱者を抱えた労働者への遠隔地配点の強要、リストラの指名に窮して相談に来た労働者へ、「あんた方が選んだ役員だろう、困っているなら、こんな時こそ組合に相談に行ってみたら・・・」と差し向けると、藁にも縋りたい労働者が期待半分で行き帰って来ると「いやー大変なもんだよ!労務以上だよ、会社の方針に従えないなら辞めろだってよ!組合がそこまで言うかよ!」こうして、退職後のあてもなく職場を去って行く人が多数居ました。これが連合組合の実態です。資本の飽くなき利潤追求は、こうした労使協調と言うより、会社派幹部を利用し労使一体で、大量の人減らし「合理化」による労働強化・労災隠しや賃金抑制政策によって、”去るも地獄残るも地獄”と言える、酷い状況が生まれたのです。

 資本の戦略はさらに大きく広く包囲網を張って仕掛けてきています。財界に都合の良い労働法制の改悪、労働基準法は骨抜きにされ、労働者を護る法律の改悪を含めて全面的なものですが、今迄記したことはその中の一断面にしかすぎません。労働運動と政治は深い関りを持っていますが、連合が民主党の最大の支持母体である事を知る賢明な労働者や庶民は、国民から見放された現在の民主党の姿を確信を持って予想していたことでしょう。
  (塩路氏については、「偽装労連 日産S組織の秘密」(同時代社叢書)青木慧著 参照)


トップへ(vulunteer)






inserted by FC2 system