ボランティア

3,文学を通して社会の矛盾に目覚める

 夏目漱石や白樺派の武者小路実篤等の作品は殆ど読んではいるが、特別目標を定める事無く、濫読で、何でも目に付いた小説は手当たり次第に読み漁った。山本周五郎や織田作之助等の作品も好きで、ずいぶん読んだものです。ただ私は、内容を理解しないと前へ進めない性格で、目読の速度は遅く、単行本一冊を読むのに何日も時間を要し、自分でもじれったくなるが、忍耐強く読み進むしかありません。
 月刊誌も当時から出版されていた中央公論や文芸春秋等何冊か購読していましたが、文芸春秋が自分の性分に合っていたのか長く読み続け、現在も購読しています。月刊誌を読み始めると、連載物が掲載されており、次回に期待を持たせる場面で終わるので、来月号の出版が待ちどうしく、読み続けることになります。私達の青春期は、石坂洋次郎の青春物や、源氏鶏太のサラリーマン物が青年に愛読され、ベストセラーとして人気がありました。私も暗に違わず出版されるとすぐ購入し読んでいました。サラリーマンである自分を、あたかも作品の主人公に置き換え、ハラハラドキドキしながら読み進んだものです。

 ところが、小説では困った事や問題が起きた時には正義感の強い先輩が出てきて助けてくれたり支援してくれるのに、現実のサラリーマンの世界は冷たく小説とは大違い、それ程甘くは有りません。後輩が困っていようが悩んでいようが、見てみぬ振りで手を差し伸べてはくれません。
私は、普段は温和で寡黙なのですが、重要で肝心かなめな時には譲歩せず持論を主張するので、上司や労務担当に不気味に受け止められていたようです。後で判った事ですが、政党政派に所属しているのではないかと、上層部や周囲は思想色に染まっていると勝手に判断しレッテルを貼って、警戒していたようです。私が社会に矛盾を感じたのは何も複雑な事ではなく、源氏鶏太の小説の世界とは全く異なる現実であるといった、単純な事が実は大きな要因であり、動機となったのは確かでした。


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